平成8年12月、「嚴島神社」が、ユネスコの世界遺産委員会で正式に世界文化遺産として登録されました。世界遺産として登録された区域は、社殿を中心とする嚴島神社と、前面の海、及び背後の弥山原始林(天然記念物)を含む森林区域431.2ヘクタールです。厳島全域の約14パーセントを占める広い範囲にわたっています。
嚴島神社は、弥山を中心に深々とした緑に覆われた山容を背景として、海上に鮮やかな朱塗りの社殿群を展開するという、世界でも例を見ない大きな構想の下に独特の景観を作り出しています。
登録された遺産のうち、嚴島神社の本社本殿・弊殿・拝殿等17棟・大鳥居・五重塔・多宝塔三基からなる建造物群は、6棟が国宝、11棟・3基が重要文化財に指定されています。
そして、バッファーゾーン(緩衝地帯)は「厳島全島」及び「宮島町長浜小名切り突角より同町大字大西町水晶山北部突角を見通す線内の海面」の範囲から、遺産範囲を除いた地域です。
世界遺産条約(世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約)は1972年にユネスコ総会で採択された条約で、日本は1992年に批准しました。この条約の目的は、世界的に価値の高い文化遺産や自然遺産は人類共有の財産であるとの認識に立って、それらが損壊や滅失の危機にあるとき、各国が協力してその保存を図ろうとするものです。この目的のために、あらかじめ、条約の締結国の代表21カ国からなる世界遺産委員会は、締約国から推薦のあった遺産を審査し、その遺産が顕著な普遍的価値を有していると認められたときは、人類共有の財産として世界遺産一覧表に記載します。
世界遺産のうち文化遺産に認定されるためには、次の6つの価値基準のどれか1つ以上に当てはまらなくてはなりません。
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嚴島神社は12世紀に時の権力者である平清盛の造営によって現在見られる壮麗な社殿群の基本が形成されました。この社殿群の構成は、平安時代の寝殿造りの様式を取り入れた優れた建築景観をなしています。また、海上に立地し、背景の山容と一体のなった景観は他に比類がなく、平清盛の卓越した発想によるものであり、彼の業績を示す平安時代の代表的な資産のひとつです。 価値基準(1) |
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嚴島神社の社殿群は、自然を崇拝して山などをご神体として祀り、遙拝所をその麓に配置した日本における社殿建築の発展の一般的な形式の一つです。周囲の環境と一環になった建造物群の景観は、その後の日本人の美意識の一基準となった作品であり、日本に現存する社殿群の中でも唯一無二のもので、日本人の精神文化を理解する上で重要な資産となっています。 価値基準(2) |
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日本に現存する社殿建築の中でも造営当時の様式をよく残し、鎌倉時代に建築された数少ない建造物となっています。 価値基準(4) |
4) |
嚴島神社は、日本の風土に根ざした宗教である神道の施設であり、仏教との混交と分離の歴史を示す文化遺産として、日本の宗教空間の特質を理解する上で重要な根拠となるものです。 価値基準(6) |