嚴島神社御鎮座の話
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嚴島神社御鎮座の話
おじいちゃん
嚴島神社さんが、何で今の所に建てられんたんか?いう話じゃが、いろんな説があってのう。
その中でも棚守房顕
[たなもりふさあき]
という、今から四百二十年位まえの神職さんが書いちゃった覚え書きがあってのう。その始めに、嚴島神社が今の場所に建てられた経緯
[いきさつ]
が書いてあるけぇ。その話をしたろう。
あるとき、天照大神
[あまてらすのおおかみ]
の命令で市杵島姫命
[いちきしまひめのみこと]
が西海を守ることになったんじゃ。
この市杵島姫命いう神さんは、宗像さんいうて、ほかに田心姫命
[たごりひめのみこと]
・湍津姫命
[たぎつひめのみこと]
がおっちゃって、三人の女の神さんなんよ。
圭ちゃん
その三人の神さんが嚴島神社の神さんなんよね。
おじいちゃん
ほうよ。
今から、そうじゃのう、千四百年ちょっと前かのう、佐西郡
[ささいぐん]
の有力者で佐伯鞍職
[さえきのくらもと]
という人がおっちゃってのう。あるとき、家来
[けらい]
を連れて大野の瀬戸で魚釣りをしよっちゃったんよ。ほしたら、西の方から紅い帆を揚げた立派な船が近づいて来たんよ。ほいてから、船のところへ来て「汝
[なんじ]
は誰
[だれ]
か?」いうて問うちゃったんじゃそうな。鞍職は「私たちは、所の翁
[おきな]
と佐伯鞍職という者で、この島に古くからいる者です。この島は私が治めています。」と答えたんといね。ほしたら立派な船に乗られたお方が「おまえの島がたいそう気にいったけぇ、貰いたいが」と言うちゃったんといの。
鞍職は、お姿がたいそう立派な方で、普通の人ではないと感じたんよのう。ほいで、直ぐに「よろしゅうございます。お言葉通り差し上げましょう。」とお答えしたら、「実は、私は昔からこの島に鎮座している神で、代々の皇室を守り、皇室からも仰
[あお]
ぎ祀
[まつ]
られているものである。今ここに来たのは、この島でどこか良いところを選んでそこに還りたいと思ったからである。お前はそこを探し出して、朝廷に申し上げ、御殿を造ってくれ。」と言うちゃったんといの。鞍職は大変ありがたく思うてのう。「承知しました。しかし、朝廷にお願いするのに何か証拠が欲しゅうございます。」とお答えしたんといの。
ほしたら、神さんが「私が今言った証拠には、お前が都に上ると、空に不思議な星が現れ、皇室の御殿の中に、榊
[さかき]
の枝を咥えた鴉が入るであろう。それが証拠だ。」と言うちゃったんといの。ほいてから、鞍職はこのお方「厳島大神様」を磯辺にある岩(御床岩
[みとこいわ]
)にお遷
[うつ]
しして、仮の御殿を造ってあげたんといの。
ほいでから、鞍職は都に上って、「実は、・・・」と事の次第を言上したんじゃそうな。そんときの推古天皇
[すいこてんのう]
様でのぉ。大神様のお言葉通り不思議なことがあったけぇ、天皇様もたいそう喜んだり、感激しちゃってのう、鞍職に御殿を造るように言われたんじゃそうな。
鞍職は、この許しをもろうて帰った後、改めて「大神様はどのような所がお気に召しますか?」とお伺いしたそうな。ほいたら、「私が高天原
[たかまがはら]
から連れて来た神鴉
[おからす]
がいて、案内するであろう。」言うちゃったんといの。
ほいで鞍職は、新しい船を造って、神様のお供をしてこの島の浦々を巡って、養父崎の沖に来たとき、鞍職は、粢
[しとぎ]
を海上に浮かべてご祈祷をしたんといの。ほいたら弥山の杜
[もり]
から二羽の神鴉さんが飛んで来て、粢団子を咥えて船の前の方に進むけぇ、その後を追いかけたんといの。ほいたら、脇浦
[わきのうら]
まで来たときに神鴉が見えんようになったんといの。ほしたら、神さんが「実は、私はここが良いと思っている。お前もそのように思うならここへ御殿を造りなさい。」と言うちゃって、最初の御殿が脇浦に造られたんじゃそうな。御島廻りは、この故事に習うて行われよるんじゃ。
圭ちゃん、こないだ話した宮島七不思議の話やら、厳島八景の話がよう分かったろう。
ほいて、余談じゃが、御床浦に仮の宮が建てられた言うたじゃろう。そこの岩に割れ目があってのう。その割れ目の紋様が、嚴島神社さんの御神紋の三ツ亀甲剣花菱紋の基になっとる。いうて言われとるんじゃ。
分かったかの?
圭ちゃん
うん。よう分かった。大事な話じゃけぇ忘れんようにするわぁ。
おじいちゃん
神鴉さんの話は、まだ続きがあるんで。
圭ちゃん
ほいたら、ついでに教えといてや。
おじいちゃん
おう、神鴉さんはのう。それから千四百年以上たった今でも御島廻りに出てこられるよのう。
圭ちゃん
ほうじゃね。今年も六回出ちゃったらしいね。
おじいちゃん
ほうよの。千四百年以上経ってもまだ続いとるのは凄かろうが。
圭ちゃん
ほうじゃね。同じ神鴉さんが毎年出よってわけないよね。
おじいちゃん
ほうよ。神鴉さんは毎年子どもに団子を運ぶことを教えよる。いうて言われとるんじゃ。
ほいてから、教えたら、大野に大頭神社
[おおがしらじんじゃ]
いうて妹背
[いもせ]
の滝があるところのお宮の杜での、子どもの神鴉とお別れをするんじゃそうな。ほいてから、親の神鴉さんは熊野へ飛んで行きんさるんといの。これを「神鴉
[おがらす]
さんの子別れ」いうんじゃ。
ほいたら、何でも熊野にも、厳島さんから神鴉さんが飛んで来られよる。いう伝説があるんといの。すごいよのぉ。
圭ちゃん
ほうじゃねぇ。ほいじゃが、おじいちゃんはよう知っとるねぇ。
感心するねぇ。
おじいちゃん
おだてんでええわい。
知っとるこたぁ教えたるけぇ。また来んさい。
圭ちゃん
ありがとう。
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